私は大学卒業後、東京の信用金庫に勤めていました。日々の業務に不満はなかったものの、どこかでもっと自分を活かせることができないかと感じてもいました。そんな時、求人誌で香港の求人特集を目にし、大学で中国近現代史を専攻していたこともあり、香港にある日系包装資材会社に転職することを決意したのです。
初めての海外での仕事は、苦労の連続でした。中国語も英語も満足にできない私は、コミュニケーションに時間がかかり、スムーズに仕事が運ばないこともしばしばでした。それでも香港の活気あふれる街の雰囲気、人々の心の温かさはそんな苦労を忘れさせてくれるほどのものでした。私は少しずつではありますが、確実に香港に魅了され、この国での仕事に熱中していくようになったのです。
日本企業の駐在員として香港に来てから4年が過ぎ、日本へ帰る時期が近づいてきました。いろいろな苦難を経験しながらも、満足感を得ていた私は悩んでいました。「できれば、もっとここで仕事を続けたい」。そう思っていた時、ある香港の企業家から声がかかったのです。「一緒に新しい会社を作らないか? 工場は私が持っているので、日本企業相手の営業をしてほしい。日本人のあなたと組めばきっとうまく行くよ」。私は勤めていた会社が好きでしたが、人生の岐路ととらえ、この話を受けることにしました。そこで設立したのが、サイバーウィンです。 |